たまにはハッピー・エンドもよかんべぇ

 今日は俺がスタッフをしているTRPGサークル「ニューディール*1」が主催するコンベンション"ND-CON"の日。そして、俺はやって欲しいという要望があった「深淵 第二版」を持っていき立卓。
 という事でGMは俺で、今回の運命に導かれたPC達は以下の通り。

カイン
12歳男性。テンプレートは「少年」。運命は「16:邪教の呪詛/緑の呪い」と「95:虫の監視」。
“蠅取草”のオレアナ
40歳女性。テンプレートは「ライエルの老薬師」。運命は「09:しがらみ」と「75:守護者」。
石頭のデナリウス
28歳男性。テンプレートは「傭兵」。運命は「76:流れ矢の予言」と「78:王者の相」。


 今回のシナリオ形式は「渦型」。要するに、PC達がどんなテンプレートでどんな運命を持っているかを見てからシナリオを組むという即興型のシナリオ作成方法だ。アドリブ・シナリオは「これが出来ないとGMとしてはまだまだだね」とか「アドリブでシナリオ作るなんてGMの怠慢だ」とか色々言われるんだが、今回やった「深淵」はアドリブ・シナリオ作成補助ギミックが色々あるので作り易い。なので俺はいつも渦型を採用している。確かにGM経験がそれなりにないと難しいかもしれないし、人によってはGM経験積んでも苦手の場合もあるけど、個人的に言えば「事前準備をしなくていい」ので楽であり、しかもGM自身がどんなセッションになるかが始まるまで読めないってところが面白いんだよね。
 で、今回はカインのプレイヤーが「リプレイは読んだ事あるけど、TRPGは初めてやる」という方だった。という事で、俺の持論「TRPG初心者は渦中のド真ん中に放り込め*2」に従い、カインを主軸にシナリオを組む事にする。で、見てみると。う〜ん、主人公っぽい運命を持ってますねぇ。
 カインの持つ「邪教の呪詛」という運命は、邪教徒に呪いをかけられたという物。なので、今回出てくる魔族はこの呪いに関する奴に決定だ。そして、「緑の呪い」はどう見ても牧人座の魔族だろう。そう思って魔族一覧を見ると、この呪いは正に牧人座の魔族「根の侯爵サラドナム」の物ではないですか。という事で、サラドナムさんにご登場願おう。
 次にカインの運命「虫の監視」は運命の説明に「蠅の王テュリアに監視されている」とある。という事で、魔族テュリアにも登場してもらう事にする。ちなみに、テュリアの周囲には必ず憑代として発狂した浮浪者がいる事になっているので、NPCに「物狂いのジョン」という奴を出す事にする。
 さてオレアナに目を移すと、オレアナの運命に「守護者」というのがある。これは魔族の封印を守っているという運命だ。そして、いい奴なんだが頼みを断れない性格という「しがらみ」を持っている。なるほど、これは中央のライエル神殿で権力闘争している奴に疎まれて「魔族の封印を守る任務」という栄転という名の厄介払いをされたんだろう。
 次にデナリウスを見ると「王者の相」という運命を持っている。これは支配者としての貫録があって人に言う事を聞かせやすいという特徴を持つが、ゲーム的には「生贄にすると召喚コストが激減」というところが目に行く。つまり、生贄要員の運命だ。
 また、デナリウスは「流れ矢の予言」という運命を持っている。これは流れ矢に当たって死ぬという予言だ。でも、今回のPCで弓を使う様な奴はデナリウス以外にいない。だったら、NPCアベルという狩人を設定し、PCのカインはそいつの元で「狩人見習い」をしている事にしよう。
 という事で、上記を総合してこんなシナリオにする。

  • 10年程前、オレアナはライエル神殿の命によって今回の舞台である村にある「根の侯爵サラドナムの封印」を守護する任務を受けて赴任した。
  • 半年程前、根の侯爵サラドナムを崇める「樹海の剣」という邪教の一団が領主によって討伐され、その時に生贄候補だったカインが救出される。しかし、カインは生贄の準備として呪いを受けていた。
  • カインの呪いは放っておくわけにもいかないので、その方面の知識に詳しいオレアナに預けられた。
  • オレアナに預けられたカインは大人になっても自立できる様に、NPCの狩人アベルの元で狩人見習いをしている。
  • カインとオレアナのいる村には、1年程前に行方不明になって4か月前に帰ってきたジョンという男がいる。ジョンは帰ってきた時には狂っていたので「物狂いのジョン」と呼ばれて村の腫物の様に扱われている。そして、その実は蠅の王テュリアの憑代である。
  • そして、この村に「王者の相」を持ったデナリウスが立ち寄る。それは根の侯爵サラドナムと蠅の王テュリアにとってまたとないチャンスである。


 うん、これでシナリオの骨子は出来上がったね。
 で、セッション。今回はプレイヤー達が「可能性は低くてもハッピー・エンドになる可能性があるならハッピー・エンドにするためにもがく」という姿勢を見せた。正直な話、俺は「2柱の魔族がガチで来るなら誰かが犠牲にならないと治まらない。それを八方丸く治めるのはゼロサム・ゲームで全員プラスになる位にあり得ない」と思うんだが、プレイヤー達の望みを無下にするのもどうかとは思った。
 という事で、PC達に様々な誘惑をかけた上で「妖精騎士*3に頼めば何とかなるかも知れない」という道を提示してみる。勿論、妖精騎士に会うのは

  • 夢歩きで超越幻視をする。
  • 超越幻視をしたなら山札を引き、カラーナンバーが1の時に出会える。他の目なら今回出てくる魔族のどちらかに会う。
  • 引いた山札は、推定寿命を4年削る事で引き直してもいい。


という条件を満たさないといけないとしたんだけどね。
 でも、プレイヤー達はPCの寿命をゴリゴリ削りながら頑張った。そこまで頑張るなら、ハッピー・エンドにしてもいいかなぁ。
 という事で、超越幻視によって妖精騎士に頼み込むカイン。妖精騎士は「呪い解いてもいいけど、蠅の王テュリアの影響力が邪魔でそっちに行けないから、こいつを何とかして」という条件を突きつける。で、戦闘でテュリアを排除して八方丸く収まりましたとさ*4
 という事で、今回の「深淵」はプレイヤーのやる気にGMが折れる形でハッピー・エンド。まぁ、TRPG初心者がいるならそのくらいサービスしても良かろう。でも、いつも「深淵」がハッピー・エンド方向に折れるわけではないので、俺の卓に来るならその辺は理解してもらおうかな。折れるのはむしろプレイヤー達の心の方だ!

*1:http://oridei.fool.jp/sub2.html

*2:自分が中心人物になると、発言が全くなくなるという事は絶対にないのでね

*3:神から地上の統治を任されたのが巨人達で、その巨人達に地上の統治を任された存在。仕事しろよ、巨人達!ちなみに、妖精騎士達はここ300年位姿を見せていない

*4:テュリアの憑代になっていたジョンも、テュリアの退散と共に死ぬのは無粋かなぁと思ったので「正気を取り戻す」にしてみた