強さのインフレに注意

 さて、「シナリオ作り」の話をしよう。
 シナリオ作りにおいて「プレイヤーを納得させる」ってのが大事だと書いてきた。で、納得させるためにはその世界観におけるリアリティが必要になる。そして、そこに繋がる話なのだが、


「強い敵が多すぎるのはリアリティに欠ける」


って事に注意するべきだ。
 これはキャンペーンでPCが強くなってきたり、強いPCを設定した単発セッションにありがちな事なのだが、敵の強さがインフレーションを起こして来る場合がある。特に、同じモンスターでも成長を重ねる事がある「ダンジョンズ&ドラゴンズ3.5版」や「ウォーハンマー」なんかをやると顕著に現れてくる。
 具体的な例を出してみよう。
 どんなゲームにもその種族の一般的な強さという物がある。例えば、モンスターデータとしてオークやゴブリンのデータが設定されているし、山賊や邪教徒といった人間であっても敵として出てくる場合にはモンスターデータとして表記されていたりする。基本的にこのデータが「その世界におけるその種族の一般的なデータ」だ。しかし、「ウォーハンマー」ではモンスターも「暴れ者」や「忍び」や「族長」といったキャリアに就かせる事によって「通常よりも強いモンスター」として作成する事ができる。「族長」一歩手前の「暴れ者」や「忍び」ともなれば歴戦の戦士であり、そんなモンスターが集まった部隊は人間で言うところの先鋭部隊だと言える。そして、高レベルのセッションをやっていると、敵が全てそんな「先鋭部隊」なシナリオを見かける事がある。
 確かに高レベルのパーティにぶつける敵なら強くないと脅威にならない。しかし、特に世界観的に納得いく説明もなしに強い敵ばかりぶつけるのはリアリティに欠ける。街道に出てくる山賊全てが「国王直属の近衛騎士団と同じかそれ以上の戦闘力を持っている」なんて聞いたら、誰が納得できるだろうか?
 確かに「歴史に残るようなオークの大族長」の周りには先鋭部隊クラスのモンスターはいてもいい。何故ならその存在にリアリティがあるからだ。しかし、特に説明もなく「PCが強いからそれに合わせた」だけで強力に成長させたモンスター達をぶつけるのは間違いだろう。何故なら、そのモンスターの一般的な強さは成長させていないデータの方であるからだ。
 こう書くと「高レベルのPC達にぶつけるモンスターなんていなくなる」と思うかも知れない。しかし、そういう場合は状況に一工夫すれば解決できたりする。例えば、最も簡単なのは「数を出す」事だ。GMの処理が大変になってしまうが、弱い敵でもワラワラと出されるとそれだけでプレイヤーは脅威に感じたりする物だ。また、弱い敵に群がられている所を弓等で狙い撃たれると早く何とかしないとマズイと思うだろう。他にも、何らかのタイムリミットを設ける事で早急に解決しないとマズイという状況を作る事も出来る。この様に、弱い敵でも状況設定を工夫すれば充分脅威にする事が出来る。
 「PC達が強いから強化した敵を単純に出す」というのでは、リアリティにおいてプレイヤーは納得しない。そして、リアリティを持たせるためにはGMの創意工夫が必要になる。そしてその創意工夫をするのがGMの努めでもあり、腕の見せ所でもある。そういう面ではシナリオ作りは大変だが、そんな中でプレイヤーを呻らせるシナリオを作れるとGMが止められなくなるくらい楽しのも事実だ。シナリオを作る際には是非とも創意工夫を凝らして「そう来やがったか、でもツッコミ所がねぇ!」とプレイヤーを悶えさせてやろう。