シナリオを作りましょう

 さて、今回は「渦型」のシナリオをやる。「渦型」というのは、プレイヤーに好きなテンプレートを選ばせてランダムで運命を決め、それを見て昼休みとかを利用して即興でシナリオを組むという方法だ。「深淵」は即興でシナリオを作るツールがシステムに組み込まれているので、GM慣れをしていれば即興シナリオを作るのが非常に楽なシステムだ。という事でPCを見てシナリオを組む。
 今回は俺がどんな風に「渦型シナリオ」を作るのかを解説してみようかな。「深淵」慣れしていない人から「どうやって渦型シナリオを構築するか分からない」って話も聞くから、参考になればと思うのでね。
 ではシナリオ作り。まず最初に注目するべき所は「限定されたシチュエーションでしか使えないテンプレートがあるか」だ。例えば「船乗り」なんかだったら海や湖、少なくとも船で往来する川がなければテンプレートが生きない。という事で今回のPCを見ると「絶望の老将」がそれに当たる。というのも、このテンプレートはバリスタ隊を指揮したりする。つまり攻城戦とかでなければテンプレートが生きないわけだ*1。という事で、とりあえず今回の舞台は攻城戦という事にする。
 では他のPCはどんな立ち位置になるのかを考える。プレイヤーが「絶望の老将」と「漂白の若き騎士」が親子だったら面白いよねという発言をしたので採用する*2。「漂白の若き騎士」の運命「不義の子」は、母親の不義によって誕生して父親の愛を獲得するために名誉と富を持ち帰ろうとする運命だ。そして運命「誓いの言葉」も恋人の所に帰るための運命なので「遠征に出て勝利し、戻ってきた」という事にする。
 では「プラージュの司祭」はどうして戦場に参加するのか?おそらく神殿が看過できない事態が起こっているのであり、魔法知識のアドバイザーとして将軍の所に派遣されたと考えればPC同士が絡める。では神殿が看過できないで派遣される理由とは何か。魔族信仰をしている教団の討伐が一番あり得るね。という事で、


「魔族教団が砦に立てこもり、それの壊滅のために老将が討伐隊を編成。アドバイザーとして神殿から司祭が派遣され、若き騎士が凱旋した」


という舞台設定にする。ちなみに、若き騎士が遠征していたのはやはり魔族教団討伐のため。今回の魔族教団の支部だったと考えれば話的にはまとめやすいだろう。
 次にPC達の運命をシナリオに絡めていく。まずは「絶望の老将」の「冬の予感」。これは「キャラクタースタイル作りのために使ってください」とルールブックにあるので、セッション中にフレーバー的に触れればいい運命。なので、シナリオ作り上では無視。「漂白の若き騎士」の「不義の子」と、「プラージュの司祭」の「任務」はシナリオに織り込んだので処理済み。
 では「絶望の老将」の「予言する猫」を処理しよう。この運命はルールブックに「≪猫の王イーツォ≫に出会い」とある。イーツォとは忘却の魔族だ。道化師の格好をした猫という姿をしており、自身に忘却の魔法をかけてしまったので様々な事を忘れるという魔族だ。ちなみに周囲に忘却を撒き散らしたりする。魔族の中では随一のマスコット的外見だが、やはり魔族という良くない存在。うん、こいうキャラは最近アニメで見たね。なので


「僕と契約して魔法少女になって欲しいんだ」


というセリフを採用する。ではその対象になる人物は誰かと考えてみると、「漂白の若き騎士」には「誓いの言葉」という運命がある。これはPCに恋人がいるという運命である。今回は婚約者という事にしておこう。ちなみに、この婚約者も運命を持っている。なるほど、だったらこれを絡めよう。という事でこんな風になる。

  1. イーツォは魔族復活の策謀を思い付く。
  2. 「漂白の若き騎士」の婚約者に夢の中で上記のセリフを言って契約をする。
  3. 彼女に魔法を使える様に刻印を刻む。ちなみに、刻印の異形は運命「異形の刻印」を参照したら通火の異形に「金色」がある事を確認できたので「全身の肌が金色になる」としてみる*3
  4. イーツォは彼女に魔法を教える事を忘れる。
  5. イーツォは彼女と契約した事や、思い付いた策謀自体も忘れる。
  6. イーツォはこの刻印を消す事ができ、頼めば快諾してくれる。ただし、別の魔族の力が邪魔で刻印を消せないのでその魔族の力を何とかしろと言ってくる。具体的には、魔族教団を壊滅すれば魔族は去るだろう。


 ペナルティだけ付けてボーナス部分は与え忘れ、しかも全部忘れる。いかにもイーツォらしい迷惑のかけ方だろう。イーツォに悪気がなさそうなところがさらに厄介だ。
 さて、あと解決しなきゃならないのは、今回のシナリオで砦に立てこもった教団が信仰する魔族と「プラージュの司祭」の運命「過去を失った者」。
 今回はイーツォが出てくるのだが、イーツォを信仰する教団はないとルールブックに書かれている。なので別の魔族を出す必要がある。で、PC達を見回すと「漂白の若き騎士」は不義の子である。そして、父親の「絶望の老将」は上級貴族。なるほど、これは≪不和の侯爵サードナ≫が上級貴族に不和を撒き散らして策謀を巡らせたと考えればいいだろうな。ちなみに、サードナは「シナリオに使いやすい魔族」だ。サードナみたいに使いやすい魔族と、運命「予言の猫」で指定されているイーツォみたいに「運命に絡む魔族」を押さえていると「今回の魔族」は決めやすいよ。
 では、最後に「プラージュの司祭」の運命「過去を失った者」。これは魔族による実験や戯れで作られた存在という真実を持っている。ならば、サードナが作った者という事にすればいい。彼の正体はサードナの眷属たる妖魔の「金狼」とすればよかろう。
 という事で、シナリオは完成。あとはセッションをするだけだ。

*1:まぁ、「行軍中に部隊が立ち寄った村」なんて設定でもありかもしれないけど

*2:勿論、プレイヤー達の許可はとったよ

*3:ドラゴンランス」のレイストリンみたいな感じだね