儀式前日(午後)

 「飢え」を背負って村に帰った狩人マーカス。彼は村に着くと炊き出しを勢いよく食べ始めた。そして、村人達は


「今年の胃袋様が出た!ありがたや、ありがたや」


と崇められる。どうやら、毎年この祭りでは魔族の「飢え」を担う者が数人出て「胃袋様」と奉られるらしい。胃袋様になった者は儀式当日、沢山の食料を食べてその「飢え」を昇華する必要があるのだそうだ。そして、その「飢え」は他PC達に伝染してきた。各PCは抵抗したのだが、ピエールはふと思った*1


「これは魔族の一部。ならば『飢え』であれ何であれ受け入れない理由はない」


 魔族の力が欲しい「緑の猟犬」結社員としては当然の考え。こうして、マーカスと共にピエールも「縁故:飢え(1点)」を得た。
 その後、ピエールも胃袋様として奉られ、マーカスと共に祠へ連れて行かれる。祠は最も食料の集まる場所であり、そこで胃袋様になった者達*2は村の家々から集められる食料を食べ続ける事になった。


マーカス「これが呪いか」
ピエール「神聖な祭りでそんな事を言うもんじゃありません。これは祝福ですよ」


 食べ続ける事によって意志力判定を行った。成功すれば「飢え」の縁故を1点増減する事ができるそうだ。そこでピエールのプレイヤーである俺はこう思った。


「この飢えを増大させれば魔族になれるんじゃね?」


 「緑の猟犬」の結社員はよく村を滅ぼしたりする。しかしそれは「魔族を封印から解いた副産物」でしかない。目的は「魔族になって不老不死」であり、「村を滅ぼす」が目的ではない。なので、悪事を積極的に働く理由はない。そして、この方法のは封印を解くよりも簡単で安全で確実に魔族になれる道なんじゃないかと思ったのだ。で、GMに確認する。


俺「このまま飢えを増大させれば魔族になれますよね?」
GM「なれるんじゃね?」


 という事で、マーカスとピエールは共に意志力判定に成功。ただし、呪いを振り払おうとするマーカスは「飢え」を1点減らし、魔族の力を得ようとするピエールは「飢え」を1点増やす。
 母神の力を受け止めようとしているピエールを見ていた吟遊詩人ブリジットは「彼こそが私の求めていた人だ」と妄想が確信に変わる。はい、それ妄想ですから。
 そして、ブリジットは傍らにいる雪狼にピエールの手伝いを命じる。雪狼はピエールにこう話しかける。


雪狼「汝はその力を欲するか。ならば試練を無事達成してみよ」


 魔族の力を求めるピエールにとって、雪狼は魔族の使者。その使者が「試練達成したら仲間になれるよ」的な発言をするのだから頑張り始める。
 さて、その光景を見ていた盗賊グラント。彼は商人と名乗るピエールに兄の仇リチャードの面影を見る。そして「リチャード、次はこれだ」と椀を渡すとピエールは訂正もせずにそれを受け取る。なので確信する。ピエールと名乗っているこの男は、風貌は随分変わってしまったが間違いなく兄の仇リチャードだと。しかし、こうも思う。


「この勢いで食べ続ければ、普通の人間だったら死ぬよね」


 本当ならナイフで刺して殺したいところだが、今それをやるのはマズイ。そして、この勢いで食べ続ければ、窒息するか胃が破裂して死ぬだろう。もし死ななくても儀式が終わった頃には動けなくなっているだろうから、その時はゆっくり殺せばいい。という事で、グラントはピエールと名乗るリチャードに、村人達が持ってくる食料をどんどん与える役に徹する事にした。なんかこう、「リアクション芸人のマネージャー」みたいだなぁ。

*1:魔法知識持ってるからね

*2:NPCも含む