注目していた裁判
マクドナルドの現役店長がマクドナルドに対して「店長は管理監督者ではないので未払い残業代払え」という訴訟があった。そして今日、その判決が出た。
- 裁判についての記事
- http://www.ohmynews.co.jp/news/20070909/14901
- 判決についての記事
- http://www.ohmynews.co.jp/news/20080128/20244
結果は店長勝訴。まぁ、当然だわな*1。
この手の裁判を見ると、ホントに経営陣て何考えてるんだか理解に苦しむね。まぁ、俺が昔勤めてた会社の経営陣達もまず削るのは人件費。で、そんな事をしているくせに役員報酬は上げようとしていたからね。しかも、そんな舐めた事してるくせに会社への忠誠心を見せろとか言っていて、脳に蛆湧いてんじゃないかと思ったもんだ。
確かに人件費は会社の支出の多くを占めている。で、身内だから削りやすいと誤解している経営者ってのは本当に呆れるほど多い。少なくとも俺が知っている中企業や大企業の経営者は全員そうだ*2。「会社の満足*3」と「顧客の満足」には気を遣うくせに「従業員の満足」には無頓着なんだよね。
バカじゃねぇの?
人件費を減らそうと考える輩は「士気」って物が分かっていない。士気の高い人間100人で構成された組織は、士気の低い人間1,000人で構成された組織よりも優れた動きをするってのが何故理解できないんだろう?量より質、これ重要。
さらに、人件費を削って士気が落ちると副次的な損害が出る。それは「退職者が増える事」だ。「会社に見切りを付けて退職」っていう退職の図式は、困った事に優秀な人物から始まる*4。で、残るは仕事のできない烏合の衆だけってわけだ。これじゃあ業績は右肩下がりになるしかない。
退職者が増えるとさらに副次的な損害が出る。それは「研修費の実質的喪失」だ。やはり業種によるが、一般的に新人を一人前にするには1000万円かかると言われる。中途入社の人間でも、その会社の仕事の流儀を理解するまでは通常より稼ぎは少ない。つまり、その差分は研修費のような物と考えていい*5。つまり、1人雇う毎に多かれ少なかれ経費がかかるわけだ。で、退職されるって事はその金をドブに捨てるのと同じだ。新入社員が一人前になった途端同業他社に移ったりしたらもう最悪。1000万円の損な上に、同業他社に即戦力が行ってしまう。しかも同業他社は少ない経費しか使わないって寸法だ。これをバカバカしいと言わないで何をバカバカしいと言うのだろう?
では社員の士気を高めるにはどうするかというと、最も簡単な方法は「高い給料を払う事」だ*6。しかもこれは「同業他社より月給が1万円多い」ってだけで充分だったりする。ボーナスも増やす事を考えても、1人あたり年間50万円多くするだけでいい。業種にもよるが、士気が高くなれば1人辺り年間500万円から1000万円は多く稼ぎ出してくれるもんだ。差し引きで450万円、上手くすると950万円やそれ以上多く稼いでくれるなら50万円程度の出費は端金だろう。
さらに、高い給料を払うという事は「優秀な人材が集まる」って事にも繋がる。同じ仕事するなら多くカネを貰いたいに決まっているので応募者もまた多い。で、「優秀な人材は全人口の5%」と仮定すると、応募者20人の中には優秀な人材は1人しかいないが、応募者200人の中には10人も優秀な人材がいる。5人採用しなければならないなら、「優秀な人物1人と凡人4人」と「優秀な人材の中のトップ5」では後者の方が間違いなく会社の益になる。
昔の人間は「損して得取れ」と良い事言った。経営が切迫していないなら目先の利益を追わず、むしろ人件費にカネをかけた方がいいと思う。いや、労働基準法をしっかり守っている会社がない様な現状では「労働基準法を尊守する」って事だけで充分士気は上がる。お得な時代だと思うんだけどねぇ。
とまぁ、そんなわけで「人件費を削った輩への鉄槌」を見たくてこの裁判に注目していたんだよね。そして、1撃目の鉄槌は打ち込まれた*7。被告は控訴するって話だから、2撃目の鉄槌も見たいなぁ。第2審の結果が楽しみだ。
「サンタマリアの名に誓い、全ての不義に鉄槌を」 by ロベルタ*8