殺すより生かせ

 さて、「シナリオ作りのコツ」の続き。
 今回のタイトルは「殺すより生かせ」。だが、これはPCの事ではない。ゲームにも寄るし面子にも寄るが、俺個人としてはPCを全滅させる位の勢いで戦闘バランスを取る方が好きだ。むしろ、PCが死なない事が分かり切ったシナリオなんて面白くも何ともない。なのでPCを殺しにかかっていいと思う。
 では何を「殺すより生かせ」なのか。それは


「PCの能力」


についてだ。
 GMをやっていると、たまにPCの能力が鬱陶しくなる事がある。例えば「ウォハンマー」をやっている時に光の魔法体系を使う魔法使いがPCにいると、攻撃魔法は唱えるは弱体化魔法はかけてくるはでGMとして何とかしたいと思ったりする。しかし、ここで「この空間では魔法を使えない」とかシナリオ上で設定した場合にはどうなるか。ほとんどの場合、魔法使いのキャラクターはやる事を失ってしまう。これはマズかろう。
 自分のPCがやる事がなくなった場合、そのプレイヤーが楽しいと思う事はマズない。自分のキャラクターが活躍する場面がなくなったらモチベーションが下がってしまうのは当然と言えよう。そして、GMが念頭に置いておくべき事は「自分を含めた参加者全員を楽しませる事」だ。つまり、モチベーションを下げてしまう様な事を狙ってやる時点でGMとしては失格と言える。
 また、直接狙ったわけではなくてもPCの能力を封じる様な事をするのは避けるべきだ。例えば、「ウォーハンマー」で戦闘になると必ず恐慌判定を求めるなんてGMはよろしくない。これは「怖ろしい敵」を演出しようとして設定した物なのだろうが、パーティー内に「恐れ知らず」の異能を持っているPCがいる場合にはその異能を殺す事になる。
 「ウォーハンマー」を知らない人のために説明すると、このゲームでは怖ろしい物を見た時に恐怖判定や恐慌判定をする事がある。恐怖判定に失敗すると行動不能になり、恐慌判定に失敗するとその場から全力で逃げ出す。で、「恐れ知らず」を持っていると恐怖判定を自動成功状態にし、恐慌判定に失敗しても恐怖判定に失敗した時の処理で済ませる事ができる。
 で、常に恐慌判定を行わせると「恐れ知らずだから平気だよ」と言えなくなる。確かに恐怖判定失敗の結果になりはするのだが、戦闘においては恐怖判定の失敗だろうが恐慌判定の失敗だろうが致命的には変わりない。「恐れ知らず」は「皆が恐怖に耐える判定を行っている時に俺は平気と言い張るための異能」なので、常に恐慌判定をさせるとこの異能の存在意義が薄れてしまう。これはこの異能修得のために経験点を使った意味をなくしてしまい、やはりプレイヤーのモチベーションを下げる。
 この様に、「PCが出来るはずの事を出来なくしてしまう」という設定をシナリオ上で行うとプレイヤーのモチベーションが下がるので避けるべきなのだ。
 勿論、魔法を何とかしたいという事もあるだろうし、「ウォーハンマー」のルールには恐慌判定もあるので使わないのはおかしいと思うのもうなずける。では、どうすればいいか。
 例えば、魔法を封じるならば「ボスと一緒に出てきた雑魚には魔法は効くが、ボスには魔法をキャンセルする能力がある」とすればいい。「ウォーハンマー」の「恐れ知らず」の場合なら「ラスト戦闘は恐慌判定だが、それ以外の戦闘ではせいぜい恐怖判定まで」としておくわけだ。つまり「シナリオの中で必ずPCの能力を生かせる場面を作っておく」という事が肝心なのだ。
 PCの能力が生きているか殺されているかは、やはりプレイヤーの目線でシナリオを見ないと気が付かない。なので、この点でも「自分がプレイヤーだったら」という観点からシナリオを作る必要がある。